昔ながらの日本家屋をリフォームして、住宅としての機能性を高めたり自分好みのデザインを施したりする『古民家リフォーム』。少子高齢化が進む中で「家余り」は深刻な問題となっており、既存の家屋を再利用する動きが近年注目されています。
そんな古民家リフォームで気になるのが、どのようなリフォームなのか、どれくらい費用がかかるのか、どんなおしゃれな事例があるのか、などではないでしょうか。そこで今回は、古民家リフォームの種類や費用、キッチンリフォームの事例などをご紹介します。古民家のリフォームをお考えの方は今回の記事を参考に、まずはどのような形でリフォームするのが自分にあっているのか考えてみてくださいね。
古民家リフォームの種類
古民家のリフォームは、リフォーム方法によって大きく以下の4種類に分けられます。
ポイント
- 古民家の一般的なリフォーム
- 古民家の半解体再生リフォーム
- 古民家の全解体再生リフォーム
- 移築再生リフォーム
古民家の一般的なリフォーム
1つ目のリフォーム方法は、古民家の水回りや外壁など気になる部分の補修を行う一般的なリフォーム方法です。柱や梁、床下などの建物の構造部分には触れずに、古くなった部分のみを補修工事するため、元々の古民家の雰囲気を残して住み続けることができます。
注意点としては、構造部分を補強しないため耐震性や耐久性に懸念が残ってしまうことが挙げられます。また、古民家の手を加えない部分と補修した部分の新旧が入り混じることになるため、チグハグな印象にならないように馴染む工夫が必要になるでしょう。
古民家の半解体再生リフォーム
2つ目のリフォーム方法は、古民家の床や屋根などを撤去して、柱や梁といった構造部分を補修・補強工事する方法です。構造部分に手を加えることで古民家の耐震性や耐久性が上がるため、安心して住み続けることができます。
また、古民家全体を解体するのではなく、構造部分と劣化がみられる設備などを補修・補強する方法なので、古民家自体が持つ雰囲気は壊さずにリフォームできるのが魅力です。
古民家の全解体再生リフォーム
3つ目のリフォーム方法は、古民家を一度すべて解体し、柱や梁などでまだ使える部材を再利用して家を建て直す方法です。古い家屋の柱や梁には丈夫な木材が使用されていることが多く、築年数の古い古民家であっても洗浄してきれいにしたり、一部を補強したりすることで、再利用できることがあります。
一度は古民家を解体してしまいますが、昔から使われていたこれらの部材を新居に使用することで、古民家ならではの温もりや懐かしさを残すことができます。ただし、すべての柱や梁を再利用した部材だけで構成すると耐震性や耐久性に不安が生じるため、最新の部材を使いながらハイブリッドで家を建て直すことが大切です。
移築再生リフォーム
4つ目のリフォーム方法は、古民家をすべて解体し、解体した部材を再利用して別の場所に家を建てる方法です。場所を移動するという点で3つ目の方法とは異なります。ほとんどすべての部材を再利用する移築再生リフォームから、一部の構造部分のみを再利用して他の部材は最新の部材を使用する移築再生リフォームまで、ケースバイケースでリフォームが行われます。
場所を移動する分、部材を運搬する費用がかかってくるため、リフォーム総額は4つの方法の中で最も高くなるでしょう。すでに土地を所有している方や、費用よりも立地を重要視する方などにおすすめのリフォーム方法です。
古民家リフォームの費用相場|キッチン・床・外壁など設備別費用もご紹介!
ここまで見てきたように古民家のリフォームにはいくつかの種類があり、リフォームの種類や規模によって費用は大きく変わってきます。部分的な設備交換などのリフォームであれば比較的費用は抑えられますし、一度解体して建て直すとなると高額な費用がかかってきます。
まず、1つ目にご紹介した「一般的なリフォーム」であれば、補修工事を行う対象設備・部分に応じてリフォーム費用が生じます。たとえば、キッチンだけをリフォームするのか、キッチン・浴室・トイレの水回りをすべてリフォームするのか、水回りに加えて床の張り替えや外壁・屋根の塗装も行うのか、などによって費用が変動します。
以下は各部分にかかるリフォーム費用の目安です。
キッチンリフォーム費用 | 40~150万円程度 |
浴室リフォーム費用 | 80〜150万円程度 |
トイレリフォーム費用 | 15~60万円程度 |
洗面所リフォーム費用 | 25~50万円程度 |
和室⇨洋室リフォーム費用 | 40~50万円程度/1部屋 |
外壁塗装費用 | 80万円~200万円程度 |
※商品やグレードにより費用は前後しますのでご注意ください
次に、2つ目にご紹介した「半解体再生リフォーム」では、耐震性を上げるための耐震工事や断熱性を上げるための断熱材補填工事などが加わるため、平均的に「1500万円程度」かかると言われています。もちろん、古民家の広さや間取りの変更の有無などによっては「2000〜3000万円程度」かかることも珍しくありません。
最後に、3つ目や4つ目にご紹介した「全解体再生リフォーム」や「移築再生リフォーム」では、建物を一度解体してから新たに家を建築する必要があるため、「3000〜4000万円程度」は必要になるでしょう。「移築再生リフォーム」のように部材の運搬や新たな土地の購入が必要であれば、さらに費用は高くなります。
古民家のリフォーム費用を安くする方法
築年数の古い家屋をリフォームするとなると、やはり先述したように数千万円単位での大きなお金が必要になってきます。リフォーム後のお引越しや家具家電の買い替え、その後の生活などのためにも、できるだけリフォーム費用は抑えたいものです。
ここでは、できるだけ古民家のリフォーム費用を抑えるための2つの方法をご紹介します。
古民家の既存の建材を再利用する
古民家のリフォーム費用を抑える方法として、既存の柱や梁などの建材を再利用する方法が挙げられます。先ほども触れましたが、古民家に使われている柱や梁などは丈夫で長持ちする木材であることが多いです。洗浄したり一部補強したりすることで、きれいな状態で再利用することが可能です。また、サッシや外壁などもきれいに磨くことで再利用できることがあります。
このように古民家に使われている既存の建材を活かすことで、リフォーム費用を抑えられる上に古民家ならではの古き良き趣を残すことができます。
古民家のリフォーム補助金を活用する
古民家をリフォームする際には、以下の補助金の支給対象となることがあります。
ポイント
- バリアフリー化のための補助金
- 耐震補強のための補助金
- 省エネ化のための補助金
バリアフリー化のための補助金
要支援・要介護1~5に認定された居住者がいるご家庭でバリアフリー化工事を行うことで「高齢者住宅改修費用助成制度」の対象となります。改修工事費用の9割を介護保険が支給してくれます。
また、自治体によってはバリアフリー化を促進するために独自の補助金制度を導入しているところがあります。たとえば大阪市では「高齢者住宅改修費給付事業」を行っており、対象となれば最大30万円が支給されます。古民家の購入を検討している自治体のHPにて補助金制度について確認してみてください。
耐震補強のための補助金
バリアフリー化のための補助金と同じく、自治体によっては耐震補強のためのリフォームに対して補助金を支給しているところがあります。たとえば東京都中野区では、1981年5月31日以前に建てられた旧耐震の木造住宅を対象に、耐震診断や耐震補強の助成制度を設けています。詳細は中野区HPの「住宅の耐震化促進事業」からご確認いただけます。
このように耐震診断や耐震補強に対して助成制度を設けている自治体は多いので、まずはリフォーム予定の古民家がある自治体HPを確認してみてください。
省エネ化のための補助金
現在国は国内の住宅の省エネ化に力を入れており、条件を満たした古民家の省エネ化リフォームを行うことで国から補助金を受け取ることができます。「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」の一環として、既存住宅の断熱リフォームを行うことで120万円を上限に、リフォーム費用を1/3が補助金の対象となります。また、太陽光パネル・省エネ給湯器の設置も補助の対象となることがあるので、環境省のHPにて確認してみてください。
※補助金額や条件は年度によって変更されることがあります。
古民家のキッチンをおしゃれに!リフォーム事例をご紹介
古民家でほとんどの方がリフォームするのが水回りです。中でもキッチンは毎日何度も使う空間ですので、使い勝手が良いおしゃれなものにリフォームしたいもの。古民家の趣を残しつつも時代に合ったおしゃれなキッチンにするために、おしゃれなキッチンのリフォーム事例を見ていきましょう。
古民家の梁を活かした和モダンキッチン
古民家のリフォームで最も人気なスタイルが「和モダン」です。古民家の梁を天井に残して、床を梁と同じ色のモダンな木材に張り替えることで、和モダンなキッチン・ダイニングスペースが出来上がります。
キッチンにはアイランドキッチンを採用することで、デザイン性だけでなく機能性でも満足のいく使いやすい広々キッチンを実現しています。古民家のキッチンは壁付きのI型キッチンであることがほとんどですので、対面式のアイランドキッチンに変更するだけでもガラリと印象が変わります。
和モダンにリフォームする時のポイントは、古民家にありがちな装飾をできるだけ排除して、できるだけミニマムにまとめること。落ち着きのある洗練された空間を演出できます。
モルタル床と塗り壁で仕上げたモダンキッチン
古民家の古い柱と梁は残しつつ、床をモルタルに、壁を塗り壁にリフォームすることで、モダンで趣のある大人なキッチン空間に仕上がっています。
柱や梁は木材で有機的ですが、そこにモルタルや塗り壁といった無機質な異素材が加わることで、温かみとスタイリッシュさを感じられる大人な雰囲気を演出できます。また、壁と床を同じ淡い色に統一することで、狭いキッチンでもすっきりと広がりのある印象に仕上げられますよ。
参考
Hello Interior:https://hellointerior.jp/note/post-35490/#15
古民家カフェのようなキッチン
最近古民家を改装した古民家カフェが流行っており、古民家をリフォームするにあたって古民家カフェのような内装を希望される方も多いです。カフェ風のキッチンにするのであれば、キッチンカウンターやキッチン背面のオープン収納などを設けて、雑多にお気に入りの雑貨や観葉植物、カフェグッズなどを並べるのがおすすめ。すべてリフォームでプロに改装してもらうのではなく、一部は自分でDIYしてみると古民家カフェのような雰囲気が演出しやすくなるかもしれません。
シックな雰囲気に仕上げたい場合は、ダイニングにアンティークの和家具をを揃えたり、アンティークなガラス照明を取り付けたりすると雰囲気が出ます。一方、温かみのあるほっこりしたカフェの雰囲気に仕上げたい場合は、ファブリックアイテムやカラーアイテムを取り入れるといいでしょう。
参考
Hello Interior:https://hellointerior.jp/note/post-35490/#15
その他にも、古民家は同じ木材を使用した北欧テイストや老舗旅館のようなレトロテイストとも相性が抜群です。お気に入りのテイストを見つけて、自分好みのキッチン周りにリフォームしてみてくださいね。
古民家のキッチンリフォームの費用の軸は水回り
今回は、古民家リフォームの種類や費用、キッチンリフォームの事例などをご紹介してきました。
一言に古民家リフォームといっても、リフォームの規模や内容によって大きく4つの種類に分類されます。部分的に設備交換などを行う一般的なリフォームであれば比較的費用を抑えられる一方、建物の構造に関わる大規模工事や解体を伴うリフォームは高額な費用が必要になります。なるべくリフォーム費用を抑えるためには、古民家の既存の部材を再利用したりリフォーム補助金を活用したりすると良いでしょう。
古民家でほとんどの方が必ずと言っていいほどリフォームするのが水回りです。中でも使用頻度が高く使い勝手やデザイン性が重要視される「キッチン」は、多くの方がこだわってリフォームする場所。古民家リフォームで人気の「和モダンスタイル」のキッチンにしたり、最近流行りの「古民家カフェ風スタイル」にしたり。ぜひ古民家の良さを活かしたお気に入りのキッチン空間をリフォームで実現してくださいね。